雨の降る世界で私が愛したのは
 

 動物園。

 一凛の心が重くなる。

「睦雄に会いに来るの止めたんだってな。えらいじゃん」 

 藤棚の柱に寄りかかった依吹は小さな葉をぷちんと一枚むしった。

「わたしね高校卒業したら留学することにしたんだ」

 濡れた葉を弄んでいた依吹は一凛を見た。

「どこの国に?」

「イギリス」

「なんで?」

 一凛は答えようと口を開けたが、一口空気だけ吸ってまた口を閉じた。

 依吹はじっと一凛の言葉を待っている。

「アニマルサイコロジーを勉強したいの」

「それって睦雄が理由?」

 素早いレシーブのように依吹は訊ねる。

 一凛は自分の足元を見ながら何度か瞬きを繰り返した。


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