雨の降る世界で私が愛したのは
一凛が笑うのをじっと依吹が見ているので「なに?」と訊くと「大人になってもえくぼは消えないんだな」と依吹も笑った。
依吹と一緒に笑っていると一凛は自分の中の湿った感情が少しづつ乾いていくような気がした。
「依吹は将来どうするの?」
笑いが一息つくと一凛は訊ねた。
依吹は弛ませていた表情を硬くした。
「考えてない、なんにも」
そういえば昔同じようなことを依吹に訊いたことがあった。
あの時も依吹は動物園を継ぐつもりはないと言っていた。
「とりあえず大人になったらどっか遠くに行きたい。誰もいないような僻地でなにか観測したり、そんな感じがいいかな」
なんだか寂しそうだなと一凛は思った。
「俺がいなくなったら寂しい?」
依吹はにニヤリとした。
「依吹が寂しいだろうな、って思ったの。わたしは依吹がいなくても寂しくなんてないから」