雨の降る世界で私が愛したのは
「だよな、卒業したら海外に行っちゃうんだもんな」
一凛は植物園からそう遠くない動物園の方を眺めた。
「ねえ依吹、お願いがあるんだけど」
「なに?」
「わたしが留学してる間に、もし彼に何かあったらすぐに連絡くれる?」
「睦雄?」
一凛はうなずいた。
「分かった」
「ありがとう依吹」
雨が激しくなってきて藤棚の下に雫がぽたりぽたりと落ちてくる。
「ここそろそろ限界かもな。まだいんの?」
「うん、もう少し」
依吹は傘を広げると一凛にさしかけ自分も隣に座った。
二人は黙って傘にあたる雨音を聞いた。
「睦雄がそんなに気になるか」
依吹が静かに言った。
一凛は首を振った。
「分かんない。どうしてこんなにハルのことが気になるのか自分でもわかんない」
「ハル?」
「わたしそんなに変?」
一凛は詰め寄るように伊吹に顔を寄せた。