雨の降る世界で私が愛したのは
真剣な一凛に依吹は一瞬たじろぐ。
「大丈夫、そんなに変じゃない。よくわかんないけど大人がいう多感な年頃とかなんだろ俺たち。今だけだって。あと何年かしたらころっと今のことなんて忘れてるって」
「ハルのこと忘れたくない」
一凛は顔を覆う。
「一凛」
依吹が一凛に触れると一凛の力の入った体がふっと弛んだ。
依吹は一凛の手をゆっくりとおろす。
潤んだ目と見つめ合う。
自分の姿を映した依吹の薄い瞳が一凛に近づいてくる。
「わたしの目真っ赤で変でしょ」
「しらない」
ああ、また自分はやってしまったと一凛は思い、ごめんと謝ろうとした口を依吹にふさがれる。
優しいキスだった。
依吹はゆっくりと体を離すと一凛の表情を確かめるように顔をのぞき込む。
「どうしてキスするの?」
「え?」
「依吹は男が好きなんでしょ」
依吹は思い出したように笑った。