雨の降る世界で私が愛したのは


 それに混じって何かが聞こえた。

 一凛は立ち止まり辺りを見回す。

「一凛」

 雨の向こうで依吹が自分を呼ぶ。

 低い哀しい音だった。

 一凛はそれをそのままそこに残し、依吹に駆け寄った。




 

 それから数日後、颯太の方からしばらく距離をおこうと言われた。

 一凛がすぐにうなずくと、颯太はため息をついた。

「やっぱり一凛ちゃんはほんとうに俺のことなんとも思ってないんだな」

 一凛は返す言葉がなく、ごめんなさいと謝ることしかできなかった。

「依吹とつき合うの?」

 一凛は驚いて颯太を見上げる。

「俺、見たんだ。あの日実は次のバス停で降りて引き返したんだ。そしたら一凛ちゃんが依吹の自転車の後ろに乗ってた」 

「依吹はただの」

 幼馴染みと言おうとして依吹とのキスを思い出す。

「ただの幼馴染みって言いたいんだろ。それってさ依吹には自分しかいないとか思ってないか」



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