雨の降る世界で私が愛したのは
 

 聞いたことのない名前の国の外国人の男が犯人だった。

 最初は日本人離れした依吹の色素の薄さを綺麗だと褒めていた近所のおばさん達はこの頃から影でこそこそ噂をするようになった。

 依吹は強姦されてできた子どもなんじゃないかと。

 噂だったものはいつしか真実になり触れてはいけないものになった。

 でもみな口にしなくなっただけで心の中ではしっかりと根を下ろしていた。



 依吹が大人になったらどこか遠くに行きたいと言っていたのは、自分を知る人が誰もいないところに行きたいという意味だったのだろうか。

 藤棚の下でのキス以来、依吹から何の連絡もなかった。

 依吹は登校時間が変わったのか、通学のルートを変えたのか、前はときどきバス停の前を通り過ぎていたが、それもなくなった。

 依吹のお姉さんの話は衝撃的ではあったが、だからと言って一凛の中で何かが変わったわけではなかった。





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