雨の降る世界で私が愛したのは


 一凛は自分を愛しているというアレックがどうして自分のために日本に来てくれないのかと思い、それを問うと、アレックは君も僕を愛しているならなぜここに残ってくれないんだと、堂々巡りになった。

 お互いが愛だと言い張る愛はあまりにも脆すぎた。

 たまたま整った条件の中だけで育まれた愛はたった一つの条件が欠けたことで簡単に壊れた。


 
 アレックと別れて数ヶ月後、街中で彼を見かけた。

 一凛と同じ長い黒髪をしたアジア人の女性と一緒だった。

 それを見たときアレックとの八年間が急に薄っぺらで中身のないものに思えた。

 本当はそうじゃないとしても、一凛の中でアレックとの想い出が完全に色あせた瞬間だった。

 それと当時に、これで心置きなく日本に帰れる。

 一凛はそう思った。

 心が弾んだ。



 一凛が日本を離れて十年が経っていた。


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