雨の降る世界で私が愛したのは
「当分は家から仕事に通うんでしょ」
「ううん、職場の近くに部屋を借りる」
窓の外に懐かしい景色が広がる。
赤になりそうな信号でほのかは今度はちゃんとブレーキを踏んだ。
動物園の横だった。
親子連れが目の前の信号を渡り正門に吸い込まれていく。
動物園の入り口は十年前と変わらないように見えたがよく見るとすべてリニューアルされ新しいものになっていた。
今は誰がこの動物園を管理しているのだろう。
依吹は、そして。
イギリスにいる間依吹から連絡が来ることはなかった。
研究に没頭し日本に帰国することを考えなくなり、そしてアレックと恋に落ちた頃から、一凛の中で変化が訪れた。
それは少女時代の終わりとも言えるものだったかも知れない。
世界が一段低いところに落ちたように感じた。
でもそれは現実と安定を一凛にもたらした。