トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「私の反応で遊んでませんか?」


精一杯の反論としてそう言ったものの、


「まさか。真面目に口説いてるだけだよ。」


と笑顔で答えられたので、言葉の返しようが無くて顔をしかめた。篤さんはそんな私を見て大笑いしている。



「……ところで、拓真と喧嘩でもした?

昨日の拓真は何か様子が変だったんだよな。」




どうして、篤さんは何でも見抜いてしまうんだろう。




「それは私のせいです……。余計なことをしてしまって。」



怪訝な様子の篤さんに続きを言おうとして、途中から泣き声に変わってしまった。


「私が好きって言わなければ、お兄ちゃん……兄を、困らせることもなかったのに。


兄に、振られたんです。


好きって言うつもり無かったんですけど、兄は優しいから、勘違いして。


期待して、ばかみたいです。


同じ家に住んでるのに、妹を振らなきゃいけない兄の辛さも、考えなしに口走って。」


篤さんは前を向いたまま、片手で私の頭をなでて、


「そっか」


とだけ言って長い間沈黙した。車内にかかっている音楽のボリュームを少しだけ上げて


「少し遠回りして行こう。


家の中じゃ思いきり泣けないだろ。」


その言われて初めて、今までずっと声を殺して泣いていたことに気がついた。


「使って」


と篤さんはハンカチを差し出してくれて、ますます気が緩んだ。そうか、私はずっと泣く場所を探していたんだ。


そう気が付いた途端に、子供のように声をあげて泣いた。
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