トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「瑞希は……いつの間にそんなに大人になってたんだ?

あんまり早く成長されると俺がついていけないよ。」


兄の表情から硬さが消えている。今までに見たことのない柔らかな表情と、いじけるような言葉がくすぐったい。


「今日でもう二十歳だもん。少しは成長だってするよ。」


首に着けたネックレスを掲げて見せた。


「ありがとう。贈ってくれて、嬉しかった。

成長ついでに、ラテン語の意味も一つだけ覚えて賢くなったよ。」


ネックレスの留め金には、私の名前と、Te Amo その意味は “愛している” と彫刻されている。


兄は照れたように笑って、目元が普段よりあどけなくなる。


「よく似合って綺麗だ。

誕生日おめでとう。

後でここのマスターに頼んで料理でも作らせて貰おうか。それから、ケーキも。」


あの日、病院で兄に頼んだ誕生日のリクエストを覚えていてくれたんだ。


「うん。

嬉しいな、久しぶりにお兄ちゃんのご飯。」


幸せで胸が痛くなる程だけど。それでも、欲張りな私はもっと甘えることにした。


「誕生日のお願いをもうひとつ増やしてもいい?」


ずっと妹の立場を利用して甘えてきたからわかる。こういうお願いを、兄は絶対に断らない。


「何でも言って」


兄は蕩けるような笑顔で頭を撫でてくれた。



頑張れ私。あと少しだけ、勇気を。


「その名前は全然似合わないから、元に戻してほしいの。

お兄ちゃんの名前は、……黒須拓真以外は認めないから。」
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