トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
気力を振り絞って伝えた想いだったのだけど、……それは完全に空振りしたようだ。兄は難しい顔をして頭を抱え込む。


「戻せるならそれも良いけど、手続きできないんじゃないか?

俺は黒須家から養子縁組を解除したから、旧姓に戻ってるんだ。


もう一回養子縁組すると言っても、義父さんと義母さんは亡くなってるし。

だとすると、改名の申請になるんだけどこれも……」





「そんな難しい手続きの話はしてないの」


ああもう、鈍い。


兄が絶望的に鈍すぎる。仕方がないので、深呼吸の後に一息で告げた。


「お兄ちゃん、私のお婿さんになって。

……もう一度、家族になろう。」


私の言ったことは全く予想していなかったようで、兄はぽかんと口をあけて目を丸くする。無防備なその顔は手品でも見せられた子供みたいだ。


そのまま固まったようにずっと動かないので、さすがに身の置き所がなくなってきた頃、予想外の方から声が聞こえた。


「藤堂くーん、その娘と仲直りできたのは良かったけどね。

きっと久しぶりに会ったんだよね?


……でもさ、それさ、お客さん見てるから。
さっきから見てるこっちが恥ずかしいからね!!


二人の世界からちょっとだけ戻ってきてくれるかな!?」
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