トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
婚約者……って言った……さっきの私のお願いを受け入れてくれたんだ。

夢じゃないよねと確かめたくて、兄の顔をじっと見つめる。


「ちゃんとしたプロポーズは、俺がもう少し成長したときにあらためてするよ。」


何度も頷くと、兄の胸に顔を押し付けられ、ぎゅっと強く抱き締められた。


「待ってー!!

それはここじゃないところで続けてくれるかな!?俺の血圧が上がっちゃうから!


明日にはイタリアに向かうんだから、思う存分二人きりでいなさい。」




明日にはイタリアに向かう。


その言葉が頭の中で反響した。そういえば篤さんも、兄は沖縄には少し立ち寄っただけと言っていたっけ。




* * *




兄がお店の厨房で料理を作っているのを、後ろから眺める。



ケーキの生地を混ぜ、それを寝かせている間にフルーツを切り、今は野菜を下拵えしていた。いつもながら手際が良く一つ一つがあっという間に仕上がっていく。


こうして兄が作った料理は既に宿泊客に提供されたり、従業員の人と食べたりしているそうだ。


「すごいなぁ……早くもプロの料理人みたいになってるね。」


「俺なんて全然、まだまだだよ。先は遠いな。」



楽しそうに料理を作る姿が好きだった。兄が作ってくれた食事を食べるのも、同じくらい好きだった。
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