極上社長と結婚恋愛
 

涙目で直哉さんの顔を伺えば、涼しい顔で「もうちょっと」と笑う。

緊張で体温が高くなり、肌の上に塗られたハンドクリームがとろりと溶けだしていくような気がした。
とくんとくんと脈打つ鼓動が、きっと手のひらを通して直哉さんにも伝わってる。

いたたまれなくてうつむいてばかりいると、頭上から笑い声が落ちてきた。
おずおずと視線を上げると、驚くくらい甘い表情で微笑まれる。

「そうやってうつむいていると、あずさちゃんの耳がよく見えるね」
「耳、ですか……?」

なんの変哲もない耳なんて、見ていて面白いのかなと首をかしげる。

「いつもは白い耳たぶが、赤く染まっていくのがかわいい」

そんな意地悪な言葉に、血液が一気にのぼってくる。
目を見開いた私に向かって楽しげに肩を揺らした。

「ほら、あの花みたいな綺麗なピンク色になった」

そう言った直哉さんの視線の先には、アプリコットピンクのトルコギキョウ。


< 110 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop