極上社長と結婚恋愛
「か、からかわないでください……!」
どんな反応をしていいのか分からなくて涙目になってしまった私に、直哉さんは機嫌よさげに笑いながらようやく右手を解放してくれた。
慌てて手を引っ込めて肩で息をする。
心臓が、痛いくらい飛び跳ねてる。
「からかってないのに」
そう言ってこちらに流れてきた視線に、またドキドキが止まらなくなる。
「ほら、次は左手出して」
平然と反対の手を要求され、泣きそうになる。
またああやって優しく手に触れられてハンドクリームを塗ってもらうなんて、心臓が持たない。
「あの、直哉さん自分で塗れます」
「やっぱりいやだった?」
私の申し出に、直哉さんが悲しげに眉を下げる。
その表情に、私は慌てて首を横に振る。
「いやなわけでは……」
「じゃあ左手」
悲しげな顔がすぐに笑顔になった。
優しいのに強引な直哉さんは、本当にずるいと思う。