極上社長と結婚恋愛
「どうかしましたか?」
ただ一瞬指が触れただけなのに、過剰な反応をしてしまった。けれど彼は嫌な顔はせず、優しく首をかしげながら私の手から鉢植えを持ち上げる。
「いえ……」
さりげなく熱くなった顔を手の甲で隠しながら、深呼吸をする。
……落ち着け、自分。
動揺を誤魔化すために、こほんと小さく咳ばらいをしてから話し出した。
「ガーデニアは乾燥に弱いので、夏場は直射日光に気を付けてあげてください」
「じゃあ、水やりも気も付けてあげなきゃダメですね」
特に不審がる様子もなく頷いてくれる。
……よかった、変に思われてないみたいだ。
ほっとして、私は深呼吸をしてから背筋を伸ばし口角を上げて頷く。
「エアコンの乾いた風も、なるべく直接当たらないようにしたほうがいいです」
「花は咲くんですか?」
彼は私から受け取った鉢植えを窓際の棚の上に置き、長い指で緑の艶々した葉をなでながら聞いてきた。
「今はまだつぼみもついていませんが、初夏から夏にかけて白い綺麗な花が咲くんですよ。ひとつひとつの花は短期間で枯れてしまうんですが、香りもいいですし次々につぼみが開いてくれるので楽しめると思います」
「へぇ。綺麗に咲くといいな」