極上社長と結婚恋愛
手に入れられないさみしさよりも、失った時の痛みの方が大きいのは当たり前のことで、今の生活が幸せだからこそ壊してしまうのが怖くて臆病になってしまう。
「付き合う前から別れることを考えるなんて、バカじゃないの?」
容赦なく言われ、頭を殴られたような気がした。
「あずさは前に付き合った人のことを引きずってるのかもしれないけど、その人と直哉さんは違うでしょ? 相手を見ずにひとりで怖がって逃げるなんて失礼だよ」
夏美の言葉に手元が震えた。指先に挟んでいた小さなライラックの花が私の手から離れ、ひらひらと足元に落ちていく。
フローリングの床に音もなく落ちたライラックを見下ろしてから、瞬きをして顔を上げた。
「……そうだよね」
「それに、もし今怖がって気持ちを伝えなかったら、直哉さんはほかの人と付き合って結婚するかもしれないんだよ? 好きな人がほかの女の人と幸せになるのを、妹として身近で見せつけられるなんて、そんなの耐えられる?」
直哉さんの大きな手のひらの感触を思い出す。包み込むような甘い声や、柔らかな笑い方。からかうような色っぽい視線や、たくましい腕。
そのすべてが、誰か違う女の人のものになるなんて……。
「そんなの、いやだ」
子供のようにぽつりと言うと、夏美は笑ってうなずいてくれた。