極上社長と結婚恋愛
 



「あー、もう! すごくすごく緊張したぁ……」



店に戻り、作業台につっぷしてひとりつぶやいた。

お届け先の社長室での自分の言動を思い返すと、自己嫌悪と恥ずかしさで泣きたくなる。

ただ鉢を届けに行っただけなのに、無駄なことを話してお仕事の邪魔をしてしまった。
男の人に見つめられただけで、すぐに赤面して緊張してどうでもいいことを口走って。挙動不審な自分が情けない。

普段はここまで動揺することなく、もうちょっと上手に立ち回れるのに。

「変だと思われたかな……」

優しい笑顔を思い出しながらつぶやいて、ぶんぶんと頭を横に振る。過ぎたことを思い返して後悔してもしかたない。気持ちを切り替えよう。

そう自分に言い聞かせていると、カランと入り口のドアベルが鳴った。


 
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