極上社長と結婚恋愛
 

以前母の日で忙しかった時、直哉さんが差し入れをもってこうやって閉店後のお店に来てくれたことを思い出す。

きっとまた、直哉さんが心配して来てくれたのかな……。

そう思いながら立ち上がり、内側から施錠してある鍵を開けると、そこには意外な人が立っていた。

「あ……、工藤さん」

いつもお店に来てくれる、常連の工藤さんだ。

薄く開いたドアの隙間から体格のいい工藤さんに見下ろされ、驚いて瞬きをする。

「あの、もう今日の営業は終わったんですが。なにかありました?」

こうやって工藤さんが閉店後にやってくるなんてはじめてだ。
急遽木の枝が必要になったりしたのかな。

首をかしげる私に、工藤さんは険しい表情のままドアの隙間に足をねじ込むように入れた。

びっくりして工藤さんの靴を見下ろすとすごい力でドアをひっぱられ、カランカランと鋳鉄製のドアベルが大きく鳴る。
そして開いたドアから工藤さんが入ってきた。


 
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