極上社長と結婚恋愛
もともと一七十センチはありそうな長身に、さらにヒールの高いパンプスを履いた彼女が私を見下ろして微笑む。
きっと役員の秘書さん、なのかな……。
洗練された大人の女性にじっと見つめられて、自分が少し恥ずかしくなる。
化粧っ気のない顔に、無造作にうしろでひとつに結んだだけのロングヘア。白いシャツと黒い細身のパンツ。制服代わりのホルターネック型の厚手のエプロンに、まだ寒いからと羽織ったカーディガン。足元はヒールどころか、すっかり履きこんだスニーカーだ。
いかにも花屋といった格好だけど、こんな立派なオフィスではあきらかに場違いだ。
「こちらにどうぞ」
そう言って歩き出した彼女の後ろをついていき、たどり着いた部屋の扉を見ると『社長室』と書かれていた。
社長さんが、わざわざうちの花屋で注文を?
背後で驚く私を無視して彼女が扉をノックすると、中から「はい」と低い声が聞こえてきた。電話でも聞いた、柔らかな声。
「社長、フラワーショップの方がいらっしゃいました」
「あぁ、ありがとう。どうぞ入ってもらって」
電話を通しても優しい声だと思ったけど、直接聞くとさらに甘い。