ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
息を切らせてわたしを守るように引き寄せられて。

LINEはずっと未読だったくせに、今も鳴ってる着信の相手が、息を切らせてるこのひとで。

ものすごく心臓が騒いだ。

色がまた、ぐっと美しさの頂点をひき伸ばす。彗大の音には頂も底もない。

美しくて泣きそうなのは初めてで。

本当は描きたくて描きたくて仕方なかったけど、
なぜか衝動的には描きたくなくて。

とても大切に描きたくて。

今は、大切に色を魅るだけでやめた。


飢えメンを追い返す彗大をちらりと盗み見し、尊くなるこの感覚と比例する感情に、自覚する。


彗大との仕事も残り僅かだ。

この仕事が終わったら、さすがにこんな毎日会うなんて、無理になる。


じゃあ、どれくらいのペースになるんだろう?

途端に、現実的なリミットを感じて不安になる。

“そんなことしなくても側にいてやるから安心しろ”

確かにそういってくれたけど。

なんの契約もしていない、なんのカテゴリーに入るかもわからないわたしと彗大の関係。


「次からは、困ってんならサッサと電話しろよ」

ただ、彗大に甘えてていいのかな?

「困ってなかったら?」

「………」

悪気なく聞いたことが、図らずもわたしの一番欲しい反応で。

そのもどかしそうな表情が、ギュッと。ジワリと沁みる。


「困ってなくても電話、してい?」

「!」

すごく嬉しそうなその顔に、多分一番嬉しかったのはわたしのほう。

だから、事務所に入った時、自分の心が冷え固まって、自身の迂闊さに戦慄した。
< 108 / 144 >

この作品をシェア

pagetop