ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
ああ、本来の神山彗大の神対応としては大失態。

相手がコイツじゃなきゃ、例えどんな修羅場でももっと上手く立ち回れたと思う。

コイツの腕、掴むの今日だけで何度目だ。

「村野、あっちの担当、お前でいいよな」

お伺いとは名ばかりの命令をしても尚、状況把握がイマイチ出来てない顔をする同僚村野。

ヘボ上司坂上にボケ同僚村野とか、転職視野に入れたくなるわ!

ポカン顔の同僚に言いたいことは山とあるが、こればかりは自業自得。時間も惜しい。


ああ、完全に焦ってるわー俺。

自分のデスクの資料も腕同様ひっ掴むと村野の返事が返ってくる間も待たず、予定していた応接室に押し入るように入って鍵を閉める。

同時に資料一式をソファに投げて、衝動のままコイツを掻き抱いた。


「……神山さん」

「それ、やめてくれ」

「今仕事中です」

「頼むから敬語もやめろ」

「わたしはTPO、弁える派なんです」

「俺も激しく推奨する派です」

「でも、神山さんは彼女みたいな方がお好みなんですよね」

「誤解です」

「プライベートな時間では、ずいぶん楽しまれたんですよね」

「……お前と出会う前の話だから」

「別に説明、いらないです」

「一回限り、名前も知らない」

「わぁー最低ですね」

「……返す言葉もございません」

「別に言わなければ良かった話じゃないですか」

「言わなきゃもっと誤解されたままだろ」

「とにかく離してください」

「嫌だ」

「だから、仕事中……」

「離したらお前、絶対逃げるだろ!」

ああー最悪だ。今の声、確実向こうに筒抜けた。

今までの俺のイメージを潰すのには、充分過ぎる一声。

この後奴らのニヤニヤした総攻撃を想像したらゲンナリするが、今はまだ止める訳にはいかない。
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