【完】姐さん!!
わたしに予定があったらどうするつもりだったんだろう。
……いや、実際には予定なんてないんだからいいんだけど。
「なんだ、デートでもするのかと思った」
「なるせ。
いつからそんな子になっちゃったの。わたしと衣沙はどう考えてもそういう関係じゃないでしょ」
「姉ちゃんのたまにあるそういうノリなんなの?
そういうことだってあるかもしんないじゃん」
「ないわよ」
かたんと立ち上がったなるせが、背もたれにかけていたブレザーに袖を通す。
それからなぜか「ふぅん?」と蠱惑的な表情を見せてから、「いってきます」と学校へ行ってしまった。
……なにあの色気のある表情。
本当になるせは中学生なんだろうか。
「なるせの成長が怖い……」
ぼそっと言ってから、テーブルを挟んで衣沙の座るソファと向かい合っているソファに身を沈める。
今日もスカートで寝転んでいるけれど。
さすがにお母さんの前だからか、「下着が見えそう」とは衣沙も言わなかった。
その代わりにブランケットを寄越してきたから、仕方なくそれをかぶる。
「ふふ、なるみちゃんだって成長してるわよ。
あ、そうだ。お母さん午前中にお買い物行って、お昼はランチの約束してるから。なるせちゃんのお昼も、お任せするわね」
「はぁい」
寝転んだまま、目を閉じた。
しばらく何も会話がない状態が続いたけれど、特に気まずいこともなく。
不意に彼が近づく気配を感じてまぶたを持ち上げれば、歩み寄ってきた衣沙がソファのそばに屈んだ。
そのせいで、目線の高さが同じになる。