【完】姐さん!!
やっと気づいたのかよ鈍感姫、と。
言ってくるニナくんにネーミングセンスがないなと思ったことはこの際どうでもいい。え、本気で?
「や、でも衣沙だし……」
そんなわけ、ないと、思うんだけど。
言われてみれば、そう考えるとすべて辻褄があっているような気が、しなくもない。
「ったく、仕方ねーからいいこと教えてやる。
お前に絶対言うなよって、こないだ俺らに教えてくれた話なんだけどよ」
「……え、うん、言っていいの?」
「なかなか進まねーお前らのために仕方なくな。
……あいつが霧夏を継いだのは、兄貴がもともと霧夏のトップで、その兄貴のことを好きだったお前を振り向かせるためにトップになったんだよ」
な、に、それ。
いやいや、うん、たとえもし仮にそれが本当だったとしたら、衣沙わたしのこと好きすぎない?
「んで、お前をトップに立たせてんのは。
……お前が中学の頃、ストーカーされたからだと」
「は……?」
「ストーカーされて、何もなかったけど、一応怖い思いしたんだろ。
……だから簡単に男が近づいてこねーように、『霧夏のトップ』っつー名目をお前に渡してんだと」
待ってよ。……そんな、の。
そんなの、言われたって、知らない。
「お前が思ってるより……
あいつ、お前のことちゃんと大事にしてんぞ」
いつも何かといい加減で、何も考えてなさそうで。
だけど……そんなこと、思ってくれてたの?
「男がキスできる相手は、個人差あるだろーけどよ。
男が本気で守ってやりたいと思う女なんて。……大事な女以外に、ありえねーと思うけど」