【完】姐さん!!
「……、ごめん。
ドアから出るところからやり直していい?」
「出てきたときには、わたしいないと思うけど」
こぼれた声が低くなる。
……だって、好きって、言いに来たのに。
「ごめん……なるみだと思わなかった」
「なにそれ……
わたしだって分かってたら、なんでもないフリして出てくるつもりだったってこと?」
「そう、じゃ、なくてさ……」
相変わらずミストパーマでふわふわの黒髪。
端からセットしていないのか、それともセットしていたけど別の"何か"で乱れたのか、ウェーブのかかったそれはいつも以上に色っぽく見える。
普段なら上半身裸の衣沙を見た時点で赤面でもしそうなところだけど、何があったのか想像がつくだけに、わたしのイライラは上昇していて。
……女と関係切ったって言ってなかったっけ?
「……衣沙に期待したわたしが馬鹿だった」
「、」
「どうせ遊ぶのやめられないんでしょ?」
「違うって」
ぐっと腕を掴まれたけど、思わずそれを振り払う。
この間さおとお昼の約束をしていたとき、衣沙に「ごめん」と言って手を払ったのを、衣沙が勘違いしてたけど。
「なんでこの状況なのかは……ちゃんと説明する。
なるみの用事も聞きたいから、とにかく、逃げないで」