【完】姐さん!!
「俺のこういうの嫌い?」
「べつに。気づいたらそういう性格だったし、いまさらなんとも思わないけど。
……ただそういうの、わたしは気持ち悪い」
「………」
「ああ、衣沙のそういう態度が気持ち悪いわけじゃなくて。
……愛想振りまいてたら、いつの間にか自分の本心がどこにあるのかわかんなくなるでしょ。だから、わたしは、気持ち悪いって思ってるだけ」
……なるみの言いたいことは分かる。
俺だってあてもなくこんな愛想の振りまき方をしているなら、自分でも何がしたいのか分からなくなっていただろう。
ただ、俺は。……俺には。
なるみを好きっていう、一貫した気持ちがある。
何か別のものがブレても、それだけは絶対に変わらない。
それこそが最も本心であるのを他でもなく俺自身が知っているから、こうやって愛想を振りまいていられる。
「……なるみは、
ひねくれた俺と違って根底が素直だからね」
「……どうだか。
ほんとに素直だったら……いまごろ、」
「………」
「好きな人の前でも、
もっと可愛げのあるわたしでいられたでしょ」
……わかってない。
本当になるみは、わかってない。
どれだけ自分が魅力的な人間なのか。
大勢に紛れたら存在がぼやけてしまうような、そんな危うくて曖昧な女の子じゃない。
兄貴の前では、いつだってなるみはとびっきりかわいい顔をしてる。
……俺が、思わず嫉妬してしまうくらい。