【完】姐さん!!
まさかとは思いつつも、一抹の期待がよぎってしまう。
違うって否定されたら落ち込むくせに、確かめずにはいられなくて。
「……俺がかわいいって思ってるって言ったから、
いまさらガラにもなく照れてんの?」
「っ……」
できるだけ冷静になろうと思ってあえて蔑むような言い方をしたそれに、すぐ暴言だか罵言だかが返ってくると思った。
さすがにうぬぼれすぎだって。……なのに、俺の言葉がまるで図星みたいに、さっきより真っ赤になって。
「ガラじゃなくて悪かったわね……」
弱々しく放たれた言葉に、なるみの赤い表情が伝染したんじゃないかって、そんな馬鹿なことを本気で思った。
……だって。なんでそんな、照れんの?
ちょっと「かわいい」って言っただけなのに。
そんなに顔真っ赤にされたら、俺だって……
「……ばか。冗談だから。
まだ何も注文してねえし、さっさとしよ」
……調子狂うし、なるみがかわいすぎてどうにかなりそうで困る。
っていうかここ最近、なんか、ヤケにかわいく見えるし。
「……わたしパスタがいい。衣沙は?」
「なるみがほかに食いてえのあるなら、
俺がそれにして分けてやるけど?」
「ならこっちのパスタも気になるから、」
「じゃあ俺それでいいよ」
……それに比例するみたいに、俺の気持ちも大きくなってる。
キスしたい、って一瞬本気で思った。その思考を完全に追いやるのに俺がどれだけ苦労するのか、目の前の彼女は知る由もなく。