【完】姐さん!!
今朝はそんな素振り全くなかったのに。
もしかして授業が面倒だからって、こっそりスマホ触って女の子に連絡してたの、なるみにバレてた?
いや、でも、よくあることだし。
何か変わったことといえば……
「……あ、」
あった。……そうだ。
花見のとき、ツキがなるみに自分の気持ちを話してた。あれって告白だろ?
なら、自分のことを想ってくれてるツキの気持ちを聞いて、揺らいだ?
揺らぐも何も最初から俺らは好き同士で付き合ってるわけじゃねえけど、何なら付き合ってることすらも嘘だけど、ツキの方が良くなった?
「そもそも、なるみちゃん我慢強いよね。
わたしなら、いくら本命が自分だって言われても、遊んでる彼氏なんてやだよー」
……兄貴のことをあきらめなきゃって思ってるなるみが、ツキを好きにならない保証なんて、どこにもない。
むしろ、そんな時だからこそ優しくしてくれるあいつに惹かれたって、何もおかしくはない。
「……約束あるから、行ってくる」
あんな風に言ってはみたけど、俺がツキを責める権利はどこにもなかった。
あいつの方がちゃんとなるみのこと想って行動してるし、臆病でもないし。
デートの約束だって俺が後から強引に取り付けただけで、先に約束していたのはツキの方だ。
なるみのことも、ツキのことも、俺に責める権利なんてないけど。
「遅いよ衣沙ー。どこ行ってたの?」
「ごめん、なるみとちょっと話してて」
「あー……なら仕方ないね」
なるみが本命って言葉だけで、無条件に許されてる。
少なくともツキ以外の男はなるみに寄ってこないし、なるみに対して中学時代みたいな嫌がらせもない。…この状況に甘えてんのは、間違いなく俺で。