メトロの中は、近過ぎです!
何もうしろめたいことがある訳ではない。
ただ、その言葉を聞いたときに大野さんの顔が浮かんだというだけのこと。

でも彼のことはなんとも思っていない。
会社の上司だし、麻紀さんとそういう仲だし……

シンさんがゆっくり近づいてくる。

「冗談だよ」
「…ですよね」
「それとも本気で浮気したの?」

シンさんの目は笑っていなかった。

「まさか…私がそんなことある訳ないじゃないですか。それよりシンさんの方が心配ですよ」
「俺?」
「沖縄で言い寄られませんでしたか?」
「うん。言い寄られた」
「あー!やっぱり!」

あはは…と二人で笑い合う。

「でも早くマホに会いたかった…」

そう言うとシンさんは私の腰に腕を回して優しく抱き寄せた。

広くて暖かいシンさんの胸。
細い指があごに触れ、上を向かされた。
切れ長の目が微笑んでいる。

私もそっと目を閉じた。

優しいキス。

もっと激しくてもいいのに。
激しくして、シンさん以外なんて考えられないようにしてくれたらいいのに……

唇が離れ目を開けると、シンさんが微笑んでいた。

優しい微笑み。

素敵な私の彼。
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