メトロの中は、近過ぎです!
「実家、寄ってくか?」
「いいの?」

伊豆からの帰り道のそばに私の実家はある。

「ああ。今日中に家に着けばいいだろ?」
「また浦安まで送るつもりなの?途中の駅で降ろしてくれていいよ」
「恵比寿も浦安もそんなに変わんねーだろ」
「全然違うから。だって千葉だよ」
「なら引っ越せよ」
「うん……」

高速道路には乗らずに一般道路で帰ることにした。

これで少しでも長く一緒にいられる。

なんてことを考えた不誠実な私を諌めたのは、奥様からいただいた包みだった。

中には生姜のクッキーが包まれていて、私が気に入ったようだったからレシピを聞いて作ってみた、と直筆の手紙まで添えてあった。

私もそんな大人になりたいと思った。
真っ直ぐで誰からも愛されて頼りにされる、そんな立派な大人になりたいと思った。

シンさんを裏切って、
彼の婚約者も傷つけて、
それでも続けていけるような、
そんな女になっていいのか……

そんな女なんかなりたくない。
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