メトロの中は、近過ぎです!
「どうしたの?わざわざ帰ってきたの?」

中から優しそうな女の人の声がする。

「お父さんが大翔に電話したの?」
「ああ」
「もう。しなくていいって言ったのに…」
「そんなことより大丈夫なのかよ」
「違うのよ。物置の整理をしてて腰を痛めただけなのよ。お父さんがちっとも手伝ってくれないから、ちょっと脅かしてやっただけなの」

ふふふと楽しそうに笑う声がした。

「なんだよ。それだけかよ」
「ごめんね。大翔、仕事はよかったの?ゆっくりしていけるの?」
「出張の帰りだったんだよ。あれ?いない」

私はここまで来たけど、まだ部屋には入れずにいた。
扉の前にいた私のところまで戻ってきた大野さんが

「どうしたんだよ。入れよ。一緒に出張から帰るとこ」

私とお母様とを引き合わせた。

彼のお母様はその声の通りに優しそうな方で、あまりはると君とは似ていないと思った。

「初めまして、佐々木です。大野さんにはいつも大変お世話になっております」
「佐々木さん?下のお名前は?」

お母様がじっと私の顔を見ている。

「…真帆です」
「佐々木まほちゃん?もしかして藤沢中央幼稚園の?」
「はい。そうです」
「まぁ。あの佐々木まほちゃん?大きくなって…お母様にそっくりね。お母様はお元気?」

お母様は嬉しそうに微笑んでいる。
本当に私たちは幼稚園時代に会っていたんだと妙に納得した。

「はい。元気にしています」
「そう。まだ梅干は漬けていらっしゃるのかしら?」
「はい。毎年、漬けています」


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