メトロの中は、近過ぎです!
「こんなとこで何してた?」

シンさんは私の耳元で囁いた。
抑えているけど、怒っているのが分かるから、声が出ない。

何を言っても許してなんてもらえないし、どこに逃げても見つかってしまう。

体が震えてくる。

「……」

何も言わない私の代わりに、大野さんが話し始めた。

「末岡さん。ご心配おかけしてすみません。
佐々木の体調が悪そうだったので、休ませようとしていました。
あの…出張の件も、佐々木は悪くないんです。
ただ俺たちは幼なじみで、あなたが心配されているような関係ではありません」

大野さんがどんな顔で言ってくれてるのか分からないけど、でもたぶんシンさんが怒ってるのはそのことじゃない。
私が逃げ出したから、ここまで探しにきたんだ。

シンさんがゆっくりと背後に回って、後ろから抱きしめるような格好で腕を廻してきた。
大野さんに見せつけるように…
腕を退かしたいのに、昨夜の光景がフラッシュバックして、体が動かない。

「大野さん。こいつには仕事辞めさせます」

グーッとシンさんの腕がきつく巻き付いてくる。
大野さんが見てるのに……

首筋にキスをされ、咄嗟にシンさんの腕をほどこうともがいた。

その拍子に首に巻いていたスカーフが外れてしまった。

慌てて首を押さえてスカーフを探すけど、スカーフはシンさんの手に握られている。

薄く笑いを浮かべるシンさんに、それ以上体が動かなかった。
< 256 / 309 >

この作品をシェア

pagetop