メトロの中は、近過ぎです!
ソファーに座ったままモデルさんがじっとこっちを見ている。

なんて綺麗な顔なんだろう。鼻が高い。

何か言わなければと思うけど、もっと見ていたいような気もする。

しばらく見つめあっていたら、整った顔がフッと崩れ、切れ長の目が優しく頬笑む。

あぁ、クラクラしてしまいそう

「もう大丈夫そうだね」

優しい声に、はっと気付いた。

どうやってここまで来たんだろう
どうして私は寝てたんだろう
なぜこの方はここにいるんだろう

「も、もしかして助け、ていただいたんで、しょうか?」

「さっきまで顔が真っ青だったよ」

ハッと顔を触ってみるけど、ひんやりしてるだけで、いつもと変わらない。

「電車の中で?倒れた、んです…か?」

「うーん、倒れたというより、フラフラだった」

「フラフラ?」

「覚えてないの?大丈夫って聞いたら、大丈夫です、って答えてたよ。でもさ顔色が本当にヤバかったから、次の駅で降りたんだけど……」

「すみません」

全く記憶にない。

「電車降りたらその場で倒れてさ。でも俺の鞄をしっかり掴んでるから、成り行きでここまで来ちゃった」

とてつもなく優雅な仕草でその人は笑った。
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