メトロの中は、近過ぎです!
「じゃあ、巻き込んでしまったんですか?すみませんでした!」

どうしよう!こんな素敵な方に迷惑かけてたなんて……

「気にしなくていいよ」

そうは言われても、

「あ、あの本当に、大変ご迷惑をおかけして…あの、なんてお詫びしたら…あ、あのお礼もですが…」

どうしよう。自分がテンパっているのが恥ずかしいくらい良くわかる。

「今後は、こんなことがないように、その、気を付けます。
いつもなら、あの17分の電車には乗らないんです。
56分の比較的空いてるやつに乗るんですけど…
あ、言い訳とかそんなんじゃなくて…
でも、今日に限って遅刻してしまって焦って…」

あー、何言ってんだ、私
深~く穴掘って入ってやりたい!

目の前には優雅に頬笑むイケメン。

こんな綺麗な男の人への免疫なんて持ち合わせてません!

「大丈夫だから落ち着いて」

囁くような低い声に心を奪われそうになりながら、一瞬ギュッと目をつぶって仕事モードに切り替えた。

「大変申し訳ありませんでした。朝の貴重なお時間をとらせてしまって。お仕事中ではなかったですか?ご迷惑でなければ私が謝罪に伺います」

一生懸命に頭を下げようとする私の頭上から、クスクスと優雅な笑い声が聞こえる。

「俺も眠たかったから、ちょうど良い口実になったよ」

そう言いながら、長い指先が不意に動いて
ゆっくりと近づいてくるモデルさん。

近くで見ると更に整った顔に見入ってしまう。
魔法にでもかかってしまったみたいに動けなくなった。

モデルさんは優しい目をして、私の頬に触れた。

え?触れられてる?!

切れ長の目を細め、そのまま髪へと移動させ
優しい手つきで頬だか髪だかを往復している手

ドキドキがうるさ過ぎて動けません。
もう一度意識が飛びそうです。


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