御曹司のとろ甘な独占愛
 それから、常盤様は豊かな笑みを浮かべて、とても楽しそうに過去の『華翡翠』コレクションの好きな作品を話してくれた。

「山越さんは、『華翡翠』コレクションのどの作品がお好き?」

「私はですね……全部大好きなのですが、二年前に発表されたものが特に好きです!」

 二年前の作品は、それまで発表されていた『未来への希望』や『幸せ』を願うエールを感じさせるデザインとは全く違っていたので、とても印象的だった。

 その作品は、アレキサンドライトと青みの強いラベンダー翡翠をメインにした、静寂に包まれた指輪。

 周囲には繊細な金細工で作られた西洋蔦とアメジストの蕾が、巻きつくようにあしらわれている。

 西洋蔦の花言葉は、永遠の愛。
 アメジストの宝石言葉は、真実の愛。アレキサンドライトの宝石言葉は、秘めた想い。

 そんな意味が込められた作品には、『“美しきもの”にとらわれたまま』というイメージコンセプトが付いていた。

「なんだか、強いメッセージを感じた作品でした。ハッとしたというか」

(あの初恋の終わり方を決めたのは、自分なのに……。彼のことが忘れられなくて、とらわれたまま、私の中で時が止まってる。彼と過ごした時間が、いつの間にか永遠になって……彼以上に好きな人なんかできないって、決めつけてる。そんな私の心を、そのまま表したみたいって、思って……)

 一花はつきりと痛む胸を、手のひらで押さえた。
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