御曹司のとろ甘な独占愛
 コツ、コツ、と革靴の音を鳴らしながら一花の座るソファに近づくと――彼女を閉じ込めるように、ソファの背もたれに手をついた。

「――俺の好きにできるんです」

 今にも肉を啄ばもうとする、獰猛な猛禽類のような視線。
 一花はきゅうと胸を掴まれるような思いになり、瞳を揺らした。

 一花の頭の両側に手をついている伯睿は、吐息のかかるような距離で一花を見つめる。

 伯睿の激情と独占欲を隠さない情熱的な視線に、どきどきする。

「……は、はくえい、……待って……! たぶん、伯睿が勘違いしてると思うの……っ」

 一花は急に熱を帯び始めた自身の体に混乱した。
 両手を祈るように握りしめる。
 
「先程の男性のお客様のことだけど……、東京で、私が凄くお世話になっていたお客様の御子息だったの」

 恐る恐る伯睿と視線を合わせ、正しい経緯を話そうと唇を開いた。

「翡翠愛好家のお母様のために、私がお土産を選ぶお手伝いをすることになって――もちろん、御子息の言動にはビックリしたけど――でも、お母様はきっと喜んでくださるだろうなぁ……って想像したら、凄く嬉しくなっちゃって……」

 喉に詰まっていた感情を吐き出すように、一花は矢継ぎ早に畳み掛ける。

「だから、間違っても御子息の行動に対する笑みじゃないっていうか……! とにかく、違うの」

 彼女はそこまで話し終えると、伯睿を窺うようにそっと息をした。


 伯睿は片眉を跳ね上げ、間の抜けた表情で黒橡色の双眸を瞬かせた。

 憑き物が落ちたような顔で、きょとんとしている。
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