御曹司のとろ甘な独占愛


 伯睿の婚約者と名乗る女性・怡菲の訪問から一週間が経過した。
 あれ以来、彼女から一花への接触はない。

(私は……伯睿を信じてる。彼女の言葉より信じるべきものは、伯睿と……それに、自分自身だよ)

 そう信じて疑っていないはずなのに、毎日ふとした瞬間に彼女の言葉を思い出しては、心に暗い影が落ちる。
 伯睿と怡菲のことを一度考え出したら、ぐるぐると渦巻く思考の海から抜け出せなくなっていた。

 この不安感に決着をつけるためには、伯睿に直接、婚約者のことを問うだけでいい。もしかしたら全部怡菲の嘘で、やっぱり婚約者なんていないかもしれないのだ。

 けれど、肝心の伯睿本人と、きちんと向き合って話す機会がなかった。

 最近は本社での仕事が忙しすぎるのか、伯睿がいつ帰ってきているのかもわからない。
 一花が起きる頃にはもう出社しているので、一つ屋根の下に居ながら、メッセージアプリで時差のあるやりとりをする生活が続いている。

 たとえ自宅で伯睿と会えたとしても、寝る間もないくらい忙しくしている彼に「婚約者がいるって本当?」なんて聞けるはずもない。

 どちらにしろ、婚約者の件を伯睿に問うことができるのは、『華翡翠』コレクションの発表やセレモニーが終わってから……。
 ――もしかすると、伯睿と怡菲が公に婚約発表をしてからになってしまうかもしれなかった。
< 128 / 214 >

この作品をシェア

pagetop