御曹司のとろ甘な独占愛
「うちのクラフツマンやデザイナー達は、元気にしていますか」

「うん。キミのところに居た時よりも、とっても元気にやってるよ」

 どちらも爽やかな笑顔を浮かべ、王子様然として堂々としている。けれど、間にはまるで火花が散っているようにも見えた。

 二人の冷戦のようなやり取りもそうだが、常盤様のお家事情を全く知らなかった一花は、二重の意味で驚いた。

(だって、尊敬する翡翠コレクターの常盤様が……、まさかあの、有名ホテルグループの社長夫人だったなんて……)

 このホテルは築二十年ほどだったはずだ。もしかするとホテル・エテルニタ台北を建設する時に、常盤様は貴賓翡翠本店に訪れたのかもしれない。
 常盤様とは不思議なご縁があるものだ。そんな心情で一花が慧を見上げていると、彼がニコリと微笑んだ。

「じゃあまあ、これから宜しくね。――すぐにキミを追い越して見せるから」

 慧は挑発するように伯睿を睨みつけると、蠱惑的な笑みを浮かべる。
 去り際に彼女へ顔を寄せると、「一花ちゃん、あとでね」と甘い声色で囁いた。
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