御曹司のとろ甘な独占愛
(伯睿はパーティーのホストだし、ずっと一緒にいられないなんて当たり前だよ。伯睿が丁寧におもてなししないと、貴賓翡翠の将来にも関わるし、……これは凄く大切な時間)

 そうやって暫くの間、呆然とした様子で伯睿を眺めていた一花は、急に目が覚めたようにハッとする。

(副社長秘書って……私に与えられた仕事じゃなくて、……ここにいても良い理由、だったんだ)

 伯睿がくれた副社長秘書という肩書きが、一花を守ってくれていた大義名分だったことに漸く気がついた。

 その肩書きがなければ、このパーティーにはいられない。
 伯睿のとなりに立つことなんて、他者からは絶対に許されていなかったのだ。

 伯睿は至って冷静な面持ちで乾杯をして宝石商らしき人々と会話していたが、女性たちはそんな彼の側で自分の番を待っていた。

(それに、彼は王子様みたいにカッコイイから……皆、会うのを楽しみにしてたはずだよね)

 そこに自分のような日本人女性も混じっているのを見つけて、不意に目が潤む。なんとも言えない感情が、ぐるぐると渦巻いていくのを感じた。

(せっかく綺麗にドレスアップしてもらったのに、こんな感情を抱くなんて、……私の馬鹿)

 自分の心の狭さを嘆いたところで、現状は何も変わらない。
 ここに立ち尽くしている訳にもいかないので、壁際に移動することにした。
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