御曹司のとろ甘な独占愛
 業務終了後、一花は伯睿の元へと急ぐ。
 いつも通りに左右を確認しながらこっそりエレベーターへ乗り、伯睿専用のフロアを目指す。到着音の後、また左右を確認して、エレベーターを降りた。

 ――コン、コン、コン。
 副社長のドアをノックする。

 耳を澄ませて返事を待ったが、伯睿は留守のようだ。

(……もしかして仮眠中かな?)

 一花は副社長室の前から離れると、廊下を途中で遮断している扉にカードキーをかざした。ロックが解除され、スライドドアが開く。
 この先は居住スペースのようになっている。
 伯睿が自宅に帰れないほど多忙な時は、この副社長専用フロアで缶詰生活を送っていた。

 広々とした贅沢なワンルーム。自然光が降り注ぐ開放的な雰囲気で、室内から続くガーデンテラスに出ることも出来る
 仮眠室という名称ではあるが、一花にとっては十分素敵な生活を送れるほどの満ち足りたスペースだった。

「お邪魔します。……はくえい?」

 控えめに呼んでみるが、伯睿が室内にいるような気配はない。一花は室内を見渡し、「お邪魔しました」とコッソリ呟いて鍵を閉める。
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