御曹司のとろ甘な独占愛
「一花、お待たせしました。お父様が香港から帰国したのを理由に、突然、お義母様からここを引っ張り出されてしまって……。
一花? ……一花? どうし――」
部屋に入ってもこちらに気がつかず、声をかけても応答のない一花の顔を覗き込み、伯睿は息をのむ。
一花は、この世界にはいないような表情で立ち尽くしていた。
彼女の蒼白な頬に、つぅと一筋の涙が流れる。
人形のようなぎこちない動きで伯睿を見上げると、血色を無くした唇を震わせた。
「あの……これ……、伯睿が……捨てたの?」
一花はケースに入った朝顔の花簪を差し出す。
色褪せておらず、埃まみれでもなく、ボロボロでもない。
透明なケースの中で凛と咲く朝顔は、十五年前と何も変わっていないのに、結局ゴミ箱に捨てられていたというのが、一花に突きつけられた現実だった。
あんなに色鮮やかだった世界は――全て褪色した。心が、凍りつく。
「そんなまさか! 俺が? ありえない!」
伯睿は驚き、目を見開くと、一花から渡された朝顔の花簪を受け取る。
ポケットチーフでケースをそっと拭いながら、怒りを堪えるように「こんなこと、許される訳がない……」と呟いた。
一花? ……一花? どうし――」
部屋に入ってもこちらに気がつかず、声をかけても応答のない一花の顔を覗き込み、伯睿は息をのむ。
一花は、この世界にはいないような表情で立ち尽くしていた。
彼女の蒼白な頬に、つぅと一筋の涙が流れる。
人形のようなぎこちない動きで伯睿を見上げると、血色を無くした唇を震わせた。
「あの……これ……、伯睿が……捨てたの?」
一花はケースに入った朝顔の花簪を差し出す。
色褪せておらず、埃まみれでもなく、ボロボロでもない。
透明なケースの中で凛と咲く朝顔は、十五年前と何も変わっていないのに、結局ゴミ箱に捨てられていたというのが、一花に突きつけられた現実だった。
あんなに色鮮やかだった世界は――全て褪色した。心が、凍りつく。
「そんなまさか! 俺が? ありえない!」
伯睿は驚き、目を見開くと、一花から渡された朝顔の花簪を受け取る。
ポケットチーフでケースをそっと拭いながら、怒りを堪えるように「こんなこと、許される訳がない……」と呟いた。