御曹司のとろ甘な独占愛
 最初の留学先は、クリソプレーズに冠されたフォールスネーム・『オーストラリア翡翠』の名で興味を持った、オーストラリアに決めた。

 そして、手始めに同世代向けの短期留学を申し込む。
 理由は単純に、新学期が始まるまでの穴埋めに丁度良かったから。同世代とホームステイというのも、一度は体験してみたかった。

 この先、伯睿は同世代と共に時を過ごすことはない。
 十月からは正規の学校へ編入し、飛び級をして出来るだけ早く大学を卒業する計画だ。

(だからここは、ただの通過点にすぎない)

 傍観者のような思いでオリエンテーションを受け、クラス分けの試験へ臨んでいたのに。


 ――運命は、どこで奇跡を起こすかわからない。

 突然、自分と引き合わされた少女を一目見た瞬間、伯睿は言葉を失った。

(ああ……なんて眩しい女の子なんだろう)

 彼女を見ているだけで、胸の奥がじんわりと甘く締め付けられる。


 あたたかく小さな震えがあふれだし、それがやがて全身に達した頃。
 心の奥底に眠る神聖な泉からせり上がってくる何かに、双眸は熱く埋め尽くされた。

 まるで眩しい光に包まれているかのようだった。
 奇跡そのものを見ているとさえ思えた。

 話したこともない、まだ互いの名前さえ知らないのに。彼女の優しさにあふれる笑顔が想像できる。この先の未来さえ、見える気がした。

 この気持ちをなんと言い表せばいいのかわからない。
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