御曹司のとろ甘な独占愛
「ごめん。……本当は……ただお帰りって、言いたかっただけなんです」

 伯睿は苦しそうに心情を吐露した。

「あれくらいで嫉妬するなんて……見苦しいって、軽蔑しますか?」

 苦悶に歪む表情を隠すように、一花の首元に顔を埋める。伯睿は胸の内で燻り続ける嫉妬や独占欲が、酷く熱を帯びるのを感じた。

「……ははっ。おかしいですよね。自分でも驚いているんです。……きみのことになると、独占欲が止まらない」

 伯睿は低く、喉から絞り出したような切ない声音で告げると、一花をこの腕から逃がさないように更に強く抱きしめた。

 背中から感じる愛情に、切なくなる。漆黒の艶やかな髪が、サラサラと一花の肌を撫でた。
 密着する部分にじわじわと集まる熱が、胸を、締めつける。
 一花は、伯睿の腕に自分の手を重ねて、込み上げる想いを我慢するように、きゅっと目を瞑った。

「……私だって、伯睿のこと……独り占めしたい……でも、でも……!」

「でも……?」

 次の言葉を促す甘く優しい声音に、一花はわっと感情が膨れ上がる。
 言ってはいけない。
 伯睿が大変な今、これを言ってはいけないのに――!

「伯睿…………婚約者がいるんでしょう?」

 ――ぽろり。
 全てを塞き止めていた何かが、脆く崩れ落ちた。
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