御曹司のとろ甘な独占愛
「本当はね……怡菲が会いに来たの。伯睿の婚約者は怡菲で、私は一時の恋人ごっこの相手だって。……伯睿のこと、本当に信じてた。……でも! 今日……見ちゃったから」

 ぽろぽろ、ぽろぽろと、涙と一緒に零れ落ちる。

(朝顔の花一時。それは、朝顔の花が咲く一時のように儚いもののこと。朝顔ちゃん。それは、わたし)

 とめどなくあふれる涙が、止められない。

「やっぱり私の恋は、『儚い恋』なんだね……?」

 一花は伯睿へ向き直ると、背の高い彼を見上げた。
 涙で滲んだ視界は揺れている。伯睿をちゃんと見据えて真実を問いたいのに、伯睿の姿が見えなかった。

「……そんなことに、なっていたのか」

 伯睿は彼女の告白に、双眸を大きく見開いた。
 胸に込み上げる想いは、一花への愛しさ。そして自らへの怒りだった。
 一花の両肩を掴み、勢いよく抱きしめる。

「……ごめん、一花」

 一花は嗚咽をもらし、少女のように顔をくしゃくしゃにした。
 伯睿は慈しむように、苦しそうに涙をこぼす彼女の背中を、何度も撫でた。

「……本当に、ごめん。……何度謝っても足りないくらいだ」

 ぽろぽろと零れるあたたかい涙を、伯睿はその長い指先でそっと掬う。
 純粋なものだけで出来たような一花の大きな瞳には、透明な水の膜が広がっていた。
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