御曹司のとろ甘な独占愛
「今日、一花が見たという怡菲のことも。……言い訳に聞こえるかもしれませんが、あれは俺が許したわけではありません。ただ、“ああしたら一生会わない”と怡菲が言い出したので、約束させてもらったまでです」

 申し訳なさそうに眉を下げ、伯睿は一花の指通りの良い艶やかな黒髪を、甘く優しい手つきで撫でた。一花は、大きな瞳にまたじわじわと涙を溜める。

 一花が不安に思っていたことは、全部、怡菲の嘘だった。
 今夜のことも、怡菲と将来を誓ったのではなく、怡菲に不可侵を誓わせただけだった。それはつまり、一花と伯睿の間を隔てるものは何も無かったということだ。

「じゃあ、私……これからも伯睿を好きでいて良いの……?」

「ええ、もちろん」

 一花の言葉に、伯睿は幸せそうに微笑んだ。
 跪いたまま、彼女の片手を掬う。

「俺の大切な人は、本当に世界でたった一人、一花だけです。――今までも、これからも」

 それから、そっと慈しむように、艶やかな仕草で一花の指先を食むようなキスをした。
 秀麗な目元に愛情を滲ませる伯睿の密やかな行為に、一花の胸はきゅうっとなる。

 心に澱のように溜まっていた不安や心配が、全て透明に浄化されていくようだった。
 指先から喜びが沁み渡り、身体中があたたかくなって……一花の色褪せていた世界が、再び極彩色の輝きを取り戻す。

 一花は嬉しさに唇を噛みしめ、涙の膜が張った双眸を細める。

「……伯睿……っ、大好きだよ……!」

 微笑みと同時に、幸せな涙が彼女の頬を伝った。
< 191 / 214 >

この作品をシェア

pagetop