御曹司のとろ甘な独占愛
 そして、疑問に思っていたことを口にする。

「一花。紹興酒の匂いがするのは、何故なんですか」

「……へ? あ、それは……」

 伯睿は無意識に、嫌悪感で顔を顰めた。
 正直、この紹興酒の匂いのせいで、キスしている最中にあの男の顔がチラついて仕方がなかった。

「あの、ちょっと色々あって、伯睿と怡菲を尾行して、同じレストランに行ったの。それで、その、慧様が紹興酒を……。あっ! 全然飲めなくて、残しちゃったんだけど……。あの……っ」

 一花は羞恥心に駆られて、頬を僅かに染める。

(ま、まさかっ、紹興酒の匂いが……っ!)

 そこまで考えて、沸騰するような恥ずかしさを覚えた。
 顔から火が出るくらい、熱い。
 一花は耳まで真っ赤に染め上げ、潤んだ瞳で伯睿を見上げた。

「慧様、ね」

 その様子に、伯睿は眉間に皺を寄せる。
 一花の可愛い表情を、あの男が引き出したような気がしてイライラした。
 独占欲に支配された脳が、彼女をぐちゃぐちゃにしてしまいたいと叫ぶ。

 一花は伯睿の様子に堪えかねて、困ったように眉を下げる。

「はくえい……」

 彼女の小動物のような様子に、伯睿は困惑と欲情を混ぜたような表情で、一花の鎖骨を撫ぜた。

「…………正直、この感情をどうしたらいいのかわからない……」

 伯睿は微かに口角を上げ、獰猛な猛禽類のような瞳で一花を射抜いた。


「――覚悟してください」
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