御曹司のとろ甘な独占愛
「十五年前からずっと聞いてたからなぁ。そうだ、日本貴賓翡翠は山越さんのために作られたって知ってた?」

「え……知らなかった、です……」

 とんでもないスケールの話に、一花は「本当?」と隣の伯睿を見上げる。
 伯睿は照れたように数度瞬きをすると、困ったように額に手の甲を当てて、肩から息を吐いた。

「伯睿は、貴賓翡翠の副社長に就任した十年前からずっと、山越さんとの再会を計画してた。たった一人を入社試験で採用するために支社を作るなんて、世界を探しても伯睿くらいだよな? 今回の山越さんの転勤を計画したのも伯睿だから。全部こいつが犯人」

「宥翔……。わざわざ言わなくていい」

「えー。いいじゃん、照れるなよ!」

 伯睿の腕にぐりぐりと肘を押し付ける。
 それから伯睿と一花を目に映すと、とっても嬉しそうに……まるで、あたたかな未来でも見つめるように、優しく目を細めた。

「じゃ、またな。山越さんも、頑張って」

 伯睿の背中を叩き、陳支社長は本社の重役が集まる輪の中に加わっていく。
 そんな彼を見送りながら、伯睿は「まったく……」と嬉しそうに小さく微笑んだ。

「一花、そろそろ展示会場から移動しましょうか」

「はい!」

 警備員達が数人集まり、展示会場の最奥で警戒を始める。
 厳重な警備の元、『華翡翠』コレクションの十作目がショーケースより取り出された。これからこの作品は、『華翡翠』コレクション十周年記念セレモニーへ向かう。

 一花は、キラキラと輝く展示会場を遠くまで眺めて、煌びやかな世界を目に焼き付けた。
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