御曹司のとろ甘な独占愛
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「劉伯睿!!」

 ノックの音もなしに、勢い良く副社長室の扉が開く。
 過去に想いを馳せていた伯睿を、義母の怒号が勢い良く現実に引き戻した。

(この女性の声で現実に引き戻されるなんて、気分が悪い)

 その考えが表に出ないように、伯睿は爽やかに、従順そうな笑みを浮かべる。そうしていれば、この女性は大抵危害を加えず、言葉の攻撃だけで終わるのだ。

「お義母様? ノックはちゃんとして下さいと、いつも言っているのに」

「そんなことはどうでも良いのです! 今日はせっかく帰国した貴方に会いに来たのに。……貴方、その薄汚い簪をまだ持っていたの!? 貴方には最も相応しい女性を、あたくしが選んであげたでしょう? そんなものは早く捨ててしまいなさい!」

 義母は父の前で見せる聖母のような表情を崩し、鬼のような形相で歩み寄ってきた。


 伯睿は手に持っていたケースを、そっとデスクの上に置く。

 苦笑を浮かべながらも、ケースの中身を隠すように置いた左手は決して退かさない。これを奪われでもしたら、自分がどうなってしまうかわからなかった。
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