御曹司のとろ甘な独占愛
「大丈夫ですよ。ここはパリですから」

 恥ずかしがる一花を抱きしめると、伯睿はそのまま抱き上げる。

「わあっ! 伯睿!」

「……完璧ですね。俺の一花は。どんな時でも可愛すぎる」

「も、もうっ!」

 お姫様のように抱き上げられ、一花は思わず伯睿の首に腕を回す。

「そろそろ時間です。行きましょうか、俺のお姫様」

 伯睿の二重瞼が優しく細められ、甘い黒橡色の瞳が一花を見つめた。


 七月七日。オートクチュールコレクションで貴賓翡翠が展示会を開催した同日の夜、『華翡翠』コレクションの十周年記念セレモニーは行われる。
 展示された新作ハイジュエリーたちは、コレクションの期間中、次の国々を巡らなければいけない。予定は分刻みで詰まっていた。

 セレモニーの会場はすでに関係者で満席になり、ジャーナリスト達も詰めかけている。

 コレクションの第一昨目が発表された時から十年間、デザイナーもクラフツマンも総責任者さえ非公表だった『華翡翠』。すべての作品が芸術的なデザインで生み出されており、類稀なる巧みなクラフツマンシップで制作されてきた。

 繊細な技巧を凝らした作品達には一切の迷いがなく、気高く、美しい。
 そのインスピレーションの源は何なのか、多くのファンが考え、憧れを抱いてきた。

 今日は、その全てが明かされる。
 貴賓翡翠『華翡翠』コレクションの魅惑のベールが脱がされる時を、世界中が期待していた。
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