御曹司のとろ甘な独占愛
 そんな彼女を伯睿は愛おしげに眺め、袖の袂から一輪の花簪を取り出した。
 ……そっと、一花の髪に挿す。

 朝顔の花簪は、あの時の輝きを保ったまま、しゃなりと揺れた。
 一花は微かに瞳を丸くする。
 伯睿は慈しみをこめて、一花の瞳を覗きこんだ。

「十五年間、一花のことを忘れた日なんて無かった。一花がこの花簪を作った時のように……、俺が一粒の翡翠の指輪を作った時のように……。きみの命を、忘れた日なんてなかった」

 遠くで、凛々と鈴虫の鳴き声が響く。

 純粋なものだけを集めたような一花の瞳に、小さな天の川ができている。
 伯睿は、宝石のような瞳の目元に、唇を寄せた。

「……息もできないほどに――きみを、愛しています」

 切なそうに形の良い眉を寄せて、伯睿は耳朶に甘く溶けるような声音で囁いた。
 一花は、きゅうっとなる指先を胸の前で握りこむ。

「私も……。……伯睿を…………」

 彼へのあふれる愛情を、ふっくらとした桜色の唇に乗せ、そっとキスをした。


 一花からおくられた、ふわふわのマシュマロのような甘いキスに、伯睿はぎゅうっと胸を掴まれる。

 ときめきよりも、ほのかな熱が体を切なく焦がす。

「――っ」

 浴衣姿の一花にいっそう情欲をそそられる。このまま、彼女をどうにかしてしまいたいと思った。

 伯睿は切なく双眸を細めて、悩ましげな視線で一花を熱っぽく見つめ……性急に唇を寄せた。
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