御曹司のとろ甘な独占愛
「う~ん、氷翡翠って本当にステキ。もともとカタログで見た時から一目惚れだったの。こうして手にとってみたら、今すぐ欲しくなっちゃうわね。これ、日本では東京本店だけなんでしょう?」

「はい! 今回はミラノ、東京のみのお取り扱いとなっております。ですので、日本国内ではこちらの指輪と、同デザインのイヤリングがどちらも一点物となっております」

「そうよね~っ! 貴賓翡翠の『季節の翡翠』コレクションの代表作は、そういうところが本当に魅力的!」

 コレクター心をくすぐるのよ、と常盤様は氷翡翠の指輪を撫でた。

 貴賓翡翠は創業より約百五十年経過している歴史ある宝石商だが、その中でもハイジュエリー・コレクション『季節の翡翠』自体は約六十年前からスタートした比較的新しいコレクションラインになる。

 春夏秋冬を巧みに表現するために選ばれた貴賓翡翠の翡翠は、どれも珠玉の一粒で、稀少性が高い。同等の価値、色味、サイズのルースを揃えての製作は困難だ。

 特にコレクションの代表作ともなると、一点物になってくる。

 勿論、店頭に並ぶ全ての商品に貴賓翡翠の巧みな技巧と情熱が詰まっているのだが、コレクションの代表作は別格だった。
 その希少性からも店頭には並ばず、常にバックヤードで保管され、一部のお客様にのみ公開されていた。

「『季節の翡翠』コレクションだけでなく、いつかは『華翡翠』コレクションも実物を見てみたいものだわあ……。もしも入荷したら、お電話下さるかしら?」

 常盤様はお茶目な仕草を添えて、そう言った。
 一花は「う〜ん。展示会などにご招待できる機会があればいいのですが……」と唸って、頼りなさげに眉を下げる。
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